ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングルは1780年、フランス南部のモントーバンに生まれ、1867年にパリで亡くなった。幼い頃から父に絵を学び、パリではジャック=ルイ・ダヴィッドのもとで学んだ。若い時期の《リヴィエール夫人の肖像》と《玉座のナポレオン1世》を見ると、個人の静かな姿と権力者の公式の姿を描き分けている。
ローマ滞在期には《オイディプスとスフィンクス》《ヴァルパンソンの浴女》《グランド・オダリスク》などを制作した。古代神話の人物、背を向けた浴女、異国趣味の女性像という題材は異なるが、輪郭線と身体の形への関心は共通する。人体を解剖学の教科書どおりに描くより、画面全体の線の流れを重視した。
1824年には故郷の大聖堂のための《ルイ13世の誓願》をサロンに出し、評価を高めた。続く《ホメロス礼賛》はルーヴル宮の天井を飾る大作として作られた。一方で《ベルタン氏の肖像》のように、装飾を抑えた市民の姿も描いた。宗教画、歴史画、肖像画を行き来する仕事の幅が見える。
1835年から1841年にはローマのフランス・アカデミーで院長を務めた。帰国後も肖像の注文を受け、《オーソンヴィル伯爵夫人》《モワテシエ夫人》《ブロイ公妃の肖像》を制作した。絹、レース、宝飾品を精密に描くだけでなく、顔や手の置き方を繰り返し考え、一人の人物を画面の中に組み立てた。
晩年の《泉》は1820年頃に始めた構想を1856年に完成させた作品で、背景などには助手も協力した。《トルコ風呂》では若い頃に描いた背を向けた女性の形を再び使い、多人数の円形画面に広げた。異国趣味の像を現実の文化の記録として受け取らず、長い制作期間を通じて続いた線と人体への探究を見比べたい。
《泉》は1820年頃から構想し、1856年に完成させた。
出典:メトロポリタン美術館 アングル展解説 / ルーヴル美術館《ホメロス礼賛》 / オルセー美術館《泉》 / モントーバン市 大聖堂(2026-09-26 確認)
《泉》の背景・小物には助手2名が参加。《グランド・オダリスク》《トルコ風呂》の異国趣味は実地記録と扱わない。
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