何が描かれているか
街の中では建物が傷み、人々の間に争いや暴力が起きる。周辺の土地にも安全な往来や農作業の姿が見えにくい。善政の壁の賑わいと対応させ、同じ都市と田園が別の状態へ変わったように見せる。
壊れた建築は背景の飾りではない。住む場所や働く場が保たれないことを、壁や屋根の傷みで伝える。
作品の見どころ
色の損失や壁画の傷みが大きい部分では、個々の動作を細かく断定しにくい。はっきり見える人物と建物を確認し、残る構図全体から、混乱した都市という主題を読む。欠けたところを想像で補わない。
善政の都市と田園は、道が人と物をつなぐ場面だった。こちらでは移動の安心が失われ、街と土地の関係が途切れる。両方の壁を比べて初めて、政治の成否を日常の変化として示す仕掛けが分かる。
制作背景
シエナ市立美術館はこの画面を1338〜1339年の連作の一部として記録する。行政を担う「九人委員会」の部屋に置かれ、悪政を遠い昔話ではなく、現在の選択に関わる警告として見せた。
絵に描かれた暴力を、当時実際に起きた特定事件の記録として扱う必要はない。理想の街と荒れた街を向かい合わせ、統治が人々の暮らしを左右するという主張を視覚化している。
アフィリエイトリンク|このリンクから購入されると、運営者に報酬が入ることがあります。
この画家について本で読む
西洋美術の歴史4 ルネサンスⅠ 百花繚乱のイタリア、新たな精神と新たな表現
小佐野重利/京谷啓徳/水野千依 著 / 中央公論新社
シエナの美術とイタリア絵画の展開を詳しく扱う美術史書。二人の画家の作品を、都市や宮廷の文化との関係から読み進められます。
楽天ブックスで見る →