小さな聖母子像に、二人の身体の近さと傷んだ画面を残す。
何が描かれているか
青い衣を着た聖母が幼子キリストを膝に抱く。幼子は母の腕の中で体をひねり、二人の手の位置が目を引く。背後には大きな金地の玉座ではなく、広がる青と左右の建築が見える。
現在残る画面は傷みが大きく、上部は弓なりの輪郭を持つ。消えた部分まで想像で埋めず、顔、手、衣の色が残る場所から二人の関係を追いたい。
作品の見どころ
この聖母子は私的な祈りの小さな板絵ではなく、市庁舎の一角のために描かれた壁画だった。親子に見える近さと、市の守護を願う公の意味が同じ画面に重なる。
聖母の衣の青は画面の広い面積を占める。幼子の明るい身体と比べると、抱きとめる腕の形が読みやすい。背後の建築や衣の線にも、人物を平らな記号で終わらせない工夫がある。
制作背景
シエナ市立美術館によれば、1340年の作と伝える同時代の記録がある。もとは市庁舎の裏手のロッジャにあり、保存のため取り外された。現在は館内で見ることができる。
当初は、良い統治の手がかりとなる四つの徳を表す像も含む、もっと広い構成だったと説明される。その部分は失われた。残る聖母子を全体の完成形と見なさず、公共の場で何を伝えようとしたかを考えたい。
作品情報
位置づけ
市政の建物に描かれた聖母子。失われた四つの徳の像とともに、統治に向けた図像を成した。
出典・画像について
画像:Ambrogio Lorenzetti《聖母子》/Sailko / Wikimedia Commons
Sailko撮影。作品外の背景を透明化した画像です。
間違いを見つけたら、教えてください →アフィリエイトリンク|このリンクから購入されると、運営者に報酬が入ることがあります。
この画家について本で読む
西洋美術の歴史4 ルネサンスⅠ 百花繚乱のイタリア、新たな精神と新たな表現
小佐野重利/京谷啓徳/水野千依 著 / 中央公論新社
シエナの美術とイタリア絵画の展開を詳しく扱う美術史書。二人の画家の作品を、都市や宮廷の文化との関係から読み進められます。
楽天ブックスで見る →