暴力を断片へ変え、見る人を聖母と聖ドミニコの黙想へ導く。
何が描かれているか
白い衣のキリストが緑の台座に座り、目を覆われ、杖を持たされている。周囲には唾を吐く顔、打つ手、棒を持つ手だけが浮かび、暴力を加える人の全身は描かれない。
前景では聖母マリアが目を伏せ、聖ドミニコが本を読みながら座る。二人は受難の場面に直接いた人物としてではなく、この出来事を祈りの中で思い返す者として置かれる。
作品の見どころ
嘲弄する群衆を省き、声や手の断片だけをキリストの周囲へ残した。見えない加害者を想像させるため、静かに座る身体と周囲の攻撃がかえって強くぶつかる。
聖母と聖ドミニコはキリストを見上げず、内側へ注意を向ける。鑑賞者も同じ姿勢を取るよう促され、物語を見る場面から、苦難の意味を考える黙想へ移される。
制作背景
サン・マルコ修道院第7房のフレスコで、1438〜1445年頃の壁画計画に含まれる。修道士の小さな生活空間に合わせ、背景や群衆を減らした簡潔な構成が選ばれた。
画面には聖書の時間と修道士の現在が重なる。ドミニコ会の創始者を前景へ置くことで、後世の修道士も彼と同じようにキリストの受難を読む立場に加わる。
作品情報
位置づけ
暴力を断片的な手や顔として示し、前景の聖母と聖ドミニコを祈る鑑賞者の位置に置いた。
出典・画像について
画像:Fra Angelico《嘲弄されるキリスト》/嘲弄されるキリスト — Fra Angelico / Wikimedia Commons
Public Domain表示の画像です。扱いは国・地域によって異なります。
間違いを見つけたら、教えてください →アフィリエイトリンク|このリンクから購入されると、運営者に報酬が入ることがあります。
この画家について本で読む
フラ・アンジェリコ 天使が描いた「光の絵画」
ヌヴィル・ローレ 著/森田 義之 監修/遠藤 ゆかり 訳 / 創元社
初期作品からサン・マルコ修道院のフレスコ画、ローマでの仕事まで、生涯と宗教画をカラー図版でたどる入門書です。
楽天ブックスで見る →