天使の翼は、大型の猛禽の翼をもとに描かれている。ウフィツィ美術館はそう説明する。天使の体は草の上に影を落とし、衣のひだにも実物を観察した跡が見える。20歳の頃、ヴェロッキオの工房にいたときの仕事である。現存する絵のなかでいちばん早い時期の1点にあたる。寸法は、ウフィツィ美術館の現行記録と別の専門目録で数値が異なっている。
何が描かれているか
天使が若い女性に「あなたは神の子を身ごもる」と告げている場面。受胎告知という、キリスト教で最も多く描かれてきた主題のひとつだ。
左でひざまずいているのが大天使ガブリエル。右手を上げて言葉を告げ、左手に白いユリを持っている。ユリは聖母マリアの純潔のしるしであり、フィレンツェの街の花でもある。マリアは本を読んでいた台の前に座り、顔だけを上げている。驚いて立ち上がったりはしない。
作品の見どころ
天使の翼は、大型の猛禽類(獲物を捕る鳥)の翼をもとに描かれている。天使の体が本当にそこにあるように見えるのは、草の上に影が落ちているからだ、とウフィツィ美術館は説明する。衣の襞にも、実物を観察した跡が見えるという。
もうひとつ、マリアの右腕が不自然に長い。この絵は教会の横の祭壇に高く掛けられ、斜め下から見上げられる前提だった。正面から見ると変だが、想定された位置から見ると正しく見える。そういう計算をしていた可能性がある、とウフィツィ美術館は説明している。
制作背景
20歳の頃の作品で、現存するレオナルドの絵でいちばん早い時期のものにあたる。まだ当時フィレンツェで一番の工房を構えていたヴェロッキオのもとで学んでいた。マリアの前に置かれた書見台(本を載せる台)の飾りは、その師の意匠をそのまま借りている。元をたどると、サン・ロレンツォ教会にあるピエロ・デ・メディチの墓碑だ。
誰が注文したのかは分かっていない。もとの置き場所も分かっていない。1867年に、街のはずれにあった修道院からウフィツィ美術館へ移された。