何が描かれているか
古代ローマの伝説に登場するルクレティアが短剣を手にしている。王の息子から性暴力を受けた後、彼女は自死を選んだと語られる。絵は出来事の結果より、決断を迫られた一瞬へ目を向ける。彼女は顔を上げ、胸元へ刃を近づける。物語の結末を知っていても、表情や体のねじれから迷いと緊張が伝わり、単なる勇敢な英雄像とは違う。
作品の見どころ
白い布と肌は、暗い背景の中で大きく明るむ。手の短剣は細い線で、顔の向きとは逆に体の中心へ向かう。布の渦巻くような動きも、静止した人物に強い感情を与える。まず短剣を持つ手を見てから、目線と肩の向きを追うと、画家が出来事の「前」を選んだ意味が分かる。古代の物語を、目の前にいる一人の人の切迫した時間に変えている。
制作背景
ゲティ美術館は1627年頃の作とし、ヴェネツィア滞在との関係を研究している。17世紀に詠まれたアルテミジアの《ルクレティア》への詩と同一作品である可能性は高いが、確定ではない。画家の体験を作品へ直結させず、当時の注文、物語、ヴェネツィア絵画の影響をあわせて考える。所蔵番号は2021.14。
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この画家について本で読む
アルテミジア・ジェンティレスキ 女性画家が生きたナポリ
川合真木子 著 / 晃洋書房
ナポリでの活動を中心に、作品と当時の史料から画家の歩みを詳しくたどる研究書です。
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