長老たちに迫られるスザンナを、若い画家が描いた初期の署名作。
何が描かれているか
水浴をしていたスザンナの背後へ、二人の長老が身を乗り出す。旧約聖書の物語では、長老たちは彼女に関係を迫り、拒めば不貞を告発すると脅す。画面のスザンナは顔をそむけ、両腕で身を守ろうとする。ここに描かれるのは誘惑への同意ではなく、逃げ場のない状況への拒絶である。長老の身振りと彼女の体の向きを見比べると、場面の緊張が伝わる。
作品の見どころ
石の欄干は、スザンナと長老の間を分けながら、上から迫る二人をいっそう近く感じさせる。彼女の体は画面の手前に大きく、背を反らして頭を遠ざけている。表情だけでなく、首、肩、腕の動きで気持ちを表した点が見どころだ。背景を細かく語りすぎず、三人の関係に目を集中させる。物語を知ったうえで見ると、これから起こる虚偽の告発も思い浮かぶ。
制作背景
ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、この絵をアルテミジアの最初期の署名・年記のある作品として1610年と紹介する。画家はまだ十代で、父オラツィオの工房で学んでいた。彼女が後に受けた暴力を、この絵の唯一の意味や制作動機と決めつけることはできない。若い時点で人物の体と心理の関係を考え、聖書の物語を自分の構図に変えた作品として見たい。
出典・画像について
画像:Artemisia Gentileschi《スザンナと長老たち》/Wikimedia Commons / Public Domain Mark
CommonsのPublic Domain Mark / PD-Art表示に基づく忠実な複製。複製写真と所蔵館規程の法域による扱いには差があり得る。
間違いを見つけたら、教えてください →アフィリエイトリンク|このリンクから購入されると、運営者に報酬が入ることがあります。
この画家について本で読む
アルテミジア・ジェンティレスキ 女性画家が生きたナポリ
川合真木子 著 / 晃洋書房
ナポリでの活動を中心に、作品と当時の史料から画家の歩みを詳しくたどる研究書です。
楽天ブックスで見る →