《天文学者》と《地理学者》は1797年まで一緒に所蔵され、いまは一枚がパリ、もう一枚がフランクフルトにある。ルーヴルは、厳密な対作品というより、同じ主題をよく似た構図で変化させた二枚だと説明する。地と天、行動と思考という対比は、強調されすぎてきた可能性がある。こちらでは、男が1600年製の天球儀に手を伸ばし、机には1621年刊の天文学書が開かれている。
何が描かれているか
長い上衣を着た男が卓に身を乗り出し、手を伸ばして天球儀に触れている。顔は球へ向き、髪が肩に落ちている。
卓には織りの厚い布が寄せてあり、その上に開いた本、アストロラーベ、コンパスが置かれている。館によれば、天球儀は1600年のホンディウスのもの、本は1621年に出たメティウスの天文書で、星について書かれた章が開いている。
作品の見どころ
この男が誰なのかは分かっていない。同じ町に住んでいた顕微鏡の学者と結びつける説があるが、館はそれを、証拠は無い、としている。その学者は、この絵が描かれた頃にはまだほとんど知られていなかった。
右の壁の絵は、水から救われるモーセを描いたものである。館はそこに神の摂理への言及を見て、学者の営みと向かい合わせに置かれていると読む。それが虚しいものなのか、それとも賢いものなのか。館はどちらとも決めていない。
制作背景
壁のモーセの絵は、レリーという画家がオランダにいた頃に描いたものとされる。館は、それがフェルメール自身の持ち物だったかもしれない、としている。
学者が仕事をしている場面は、当時のオランダで好まれた主題だった。館はレンブラントやドウの名を挙げ、祈りや瞑想にふける聖ヒエロニムスや隠者の絵とも近いところにある、と書いている。