1490–1497年頃
37〜45歳

ラ・ベル・フェロニエール

画家 レオナルド・ダ・ヴィンチ
Portrait de femme, dit à tort La Belle Ferronnière / ルーヴル美術館
呼び名のほうが間違っている絵である。ラ・ベル・フェロニエールとは、フランス王の愛人に付いていた通称だった。19世紀に画家アングルと版画はんが家が取り違え、それがこの絵に付いた。誤りと分かった後も、呼び名だけが生き残る。だから正式な題には、いまも「誤って」という断りが入っている。誰の肖像なのかも、決まっていない。

何が描かれているか

額に細い髪飾りを着けた女性が、手すり越しにこちらを見ている。手すりは絵の手前を横切っていて、見る人と彼女のあいだを物理的に隔てている。
姿勢がねじれている。ルーヴル美術館の説明では、上半身は左へ四分の三向いているのに、頭は逆を向く。何かが急に注意を引いたかのように。

作品の見どころ

当時のミラノの肖像は、真横から描くのが主流だった。この絵はそれをやめ、四分の三の向きを選んでいる。ルーヴル美術館は、これをフランドル絵画から学んだものだとする。
美術館が「並外れた新しさ」と呼ぶのは、そこではない。姿だけでなく、内面の生をも写し取った点である。だからこの肖像は近代的なのだ、と書いている。ただし美術館は、彼女の表情が白貂しろてんを抱く貴婦人よりも閉じている、とも付け加えている。

制作背景

モデルが誰なのかは決まっていない。いちばん支えのある説はルクレツィア・クリヴェッリで、根拠はレオナルドの手稿に見つかった一篇のラテン語の詩だ。書いたのはアントニオ・テバルデオという詩人。「レオナルドが、愛人のためにルクレツィアという女性の肖像を描いた」とたたえる内容だ。愛人とは、ミラノ公のことである。
その詩には続きがある。レオナルドは彼女の魂までは描かなかった、なぜならそれは公のものだから、と。ルーヴル美術館は、手前の手すりも、見る人と彼女のあいだに距離を置くために注文主が求めたものかもしれない、と書いている。詩と絵が、同じことを言っていることになる。

作品情報

寸法
63 × 45 cm
材質・技法
クルミ板に油彩ゆさい
所蔵
ルーヴル美術館(パリ)現在展示されていない
目録
INV 778; MR 317
ほか
正式題は「誤ってラ・ベル・フェロニエールと呼ばれる女性の肖像」

出典・画像について

出典:ルーヴル美術館 作品ページ2026-09-05 確認)
画像:レオナルド・ダ・ヴィンチラ・ベル・フェロニエール》/作品: レオナルド・ダ・ヴィンチ/画像出典: Wikimedia Commons(sourceUrl参照)
画像の出典 / Public Domain Mark 1.0 / PD-Art(画像情報:2026-09-03 確認)
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