白い輪郭の人物が、灯りを携えてアーチの奥へ入る。
何が描かれているか
帽子をかぶった人物が背中を見せ、石のアーチをくぐろうとしている。左手は入口の縁に添え、右手からは丸い灯りが下がる。足は前へ踏み出すが、奥に何があるのかは描かれない。背中から脚へ流れる衣服の線と、手元から広がる光の線が、入口の前のわずかな動きをはっきり見せる。
作品の見どころ
画面はオレンジ色の地に白い線が残る作りで、黒い線で人物を描く版画とは明暗の関係が異なる。アーチの短い刻みと衣服の長い線を比べると、硬い石と柔らかな布の違いも読める。灯りの周りでは円と放射線が重なり、人物の後ろ姿をもう一度照らす。色数が少なくても、線の向きと密度だけで見せ場が生まれている。
制作背景
彩飾本『エルサレム』の口絵で、メトロポリタン美術館は、この紙の版画を1804〜1820年頃の制作と推定している。技法はオレンジ色のインクで刷った白線彫版として記録される。水彩で細かく色分けした『無垢の歌』のページと並べると、同じ本づくりの中でも表現が異なることが分かる。印刷面の上の文字や、原紙の余白も残して見たい。
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