何が描かれているか
葦の茂みの奥に、角を持つパン神が座って笛を吹く。パンは羊飼いや野の自然に結びつくギリシア神話の神である。近くには水辺と草木が広がり、神は舞台の主人公のように目立って立つのではなく、景色に溶け込んでいる。まず葉の間から顔と腕を探すと、この絵の主題が見えてくる。
作品の見どころ
縦長の画面を葦や木の幹が埋め、奥へ進む視線を何度も遮る。明るい空と水面が狭くのぞき、湿った場所の空気が伝わる。草の細い線と神の体の輪郭が交じり合うため、見つけた人物が再び自然の中へ隠れるようだ。音は描けないが、葦の間に笛を置くことで静かな音楽の場を作っている。笛の音が外へ広がる先にも、葦の密度が続いている。
制作背景
ノイエ・ピナコテークは1858年の油彩画として所蔵する。ベックリンは風景の中に古代神話の存在を置き、自然を単なる背景以上のものにした。この作品を後年の海の怪物やケンタウロスと並べると、神話を現実らしい場所へ入り込ませる試みが長く続いたことが分かる。
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