何が描かれているか
町の通りを、黒い翼と鋭い爪を持つ怪物が飛ぶ。下では人々が倒れ、逃げ場の少ない街に恐怖が広がる。題名のペストは疫病を指し、怪物は病そのものを見える姿に変えたものとして読める。実際の感染の広がり方を描く医学的な図ではなく、目に見えない脅威を一つの形にした絵である。
作品の見どころ
縦長の画面を怪物が斜めに横切り、見る人の視線は上から地面の人々へ落ちる。黒い翼、灰色の建物、赤い衣がぶつかり、静かな島の絵とは違う切迫感を生む。怪物の大きさが街の人間を小さく見せる。どこから飛んで来たかは示されず、画面の外まで恐怖が続くように感じられる。怪物の影がどこへ伸びるのかも気になる。
制作背景
バーゼル美術館は1898年の作品として紹介する。同館の解説では、画家が1870年代のコレラへの関心を持っていたことにも触れる。ただし、この絵を特定の都市で実際に起きたペスト流行の記録とみなす根拠はない。晩年にもベックリンは、死や不安を神話的な姿へ変える方法を用いた。
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