題名は「誕生」だが、描かれているのは海から生まれる瞬間ではなく、ヴィーナスが貝に乗ってキプロス島へ着く場面である。左から風が吹き、右から衣が差し出され、中央の女神へ動きが集まる。髪、波、衣の流れを左から右へ追ってみたい。
何が描かれているか
愛と美の女神ヴィーナスが大きな貝に立ち、岸へ運ばれる。左の風の神たちが息を吹き、右の季節の女神が花模様の衣で迎える。
中央の身体は静かだが、周囲では風、髪、布、波が動く。立ち姿や風の神の表現には、古代彫刻や宝石の図像との関係が指摘される。
作品の見どころ
キリスト教の聖人ではなく古代の女神を、ほぼ等身大より大きく描く。古代文化を写すだけでなく、同時代のフィレンツェで新しい絵画へ組み直した。古代の形を、そのままの複製ではなく、線と色の物語へ変えている。
題名は「誕生」だが、画面が示すのは海から岸への到着である。左から右へ進む動きと、待ち受ける衣が次の瞬間を予告する。中央だけを切り取ると静かな像だが、貝、岸との距離、広げた衣まで見ると、物語の途中にいることが分かる。
制作背景
縦172.5センチ、横278.5センチのキャンバスにテンペラで描かれた。横長の画面が、海から岸へ進む動きを広く見せる。
メディチ家のための制作だった可能性は高いが、注文書は残らず、作品記録は1550年以後に確認できる。有力説と確定事項は分けて扱う。
メディチ家の注文は有力な説です
メディチ家の一員が注文した可能性は高いと考えられていますが、制作時の注文書は残らず、作品の文書記録は1550年以後です。
出典・画像について
画像はWikimedia CommonsのPD-Art複製です。忠実複製の扱いには法域差があります。
画像:サンドロ・ボッティチェリ《ヴィーナスの誕生》/Sandro Botticelli, The Birth of Venus, Uffizi. Google Arts & Culture, via Wikimedia Commons.
Wikimedia CommonsのPD-Art複製です。忠実複製とイタリア文化財制度の扱いには法域差があります。
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