何が描かれているか
司教の帽子と白い手袋を身につけたゼノビウスが、画面に三度現れます。左では二人の少年から悪霊を追い払い、中央では母親のひざにいる子どもを生き返らせ、右では目の見えない人を癒やします。
これらはフィレンツェで敬われた聖人にまつわる伝説の場面です。ひとつの広場のようでも、同じ時刻の出来事ではありません。同じ人物を繰り返して、三つの話をつなげています。
作品の見どころ
鮮やかな衣の人々が、石の建物の前に集まっています。中央では子どもへ手を伸ばす母親の動きが大きく、右では聖人の指先が目元へ近づきます。手の形を追うと、各場面の中心が分かります。
柱や扉、石の床は横長の画面を整理し、風に揺れるような衣や傾いた身体がそこへ動きを加えます。建物の線をたどると、物語を読むための区切りだと感じられます。
制作背景
所蔵館は1500年頃の卵テンペラ画としています。四枚から成る聖人の物語のうち二枚目にあたり、ここにはロンドンの作品を掲載しています。同じ題名の別の板絵とは区別が必要です。
注文主や最初の用途は確定していません。少年たちの宗教団体のためだった可能性がありますが、断定はできません。身振りと連続する場面で聖人の伝説を語る、晩年の一枚です。