何が描かれているか
アイネイアスの息子アスカニウスが狩りをし、川辺の鹿へ矢を放つ。鹿はシルウィアが大切にしていた飼い鹿で、この傷が争いを引き起こす。物語では復讐の女神アレクトが事件を仕組むが、その姿は絵に現れない。代わりに左の木を曲げる風や暗い雲が、平穏が破れる気配を伝える。矢が届く前の短い時間が描かれている。
作品の見どころ
矢の向きと鹿の位置を確かめた後、画面の左の木と空を見てみよう。静かな遠景と荒れ始めた近くの空が対照的で、物語の結末を知らなくても不安を感じる。大きな風景はただ美しいだけではなく、これから起こる戦いを予感させる。人物や鹿が小さいからこそ、土地全体が出来事の証人のように見える。
制作背景
アシュモレアン美術館は1681~1682年の本作をロラン最後の絵画と説明する。注文主はロレンツォ・オノフリオ・コロンナで、絵の柱は彼の家名を思わせるともいう。題材はウェルギリウスの《アエネイス》に基づく。若い頃から続けたローマ郊外の自然観察が、晩年には平和から戦争へ変わる一瞬を描くために使われた。