何が描かれているか
旧約聖書に登場するシバの女王が、ソロモン王を訪ねる旅へ出る。赤い衣と冠を着けた女王は右の階段を下り、船へ向かう。画面中央では朝日が海を照らし、両側の古典風の建物が港を囲む。聖書は女王が海路を取ったとは記していない。ロランは旅の物語を、彼が得意とした想像上の海港へ置き換えた。
作品の見どころ
女王は大きな建物や船に比べて小さい。まず明るい太陽と水面を見て、そこから階段の女王を探すと、景色の中に物語が組み込まれていることが分かる。建物は左右に分かれ、中央の海へ視線を開く。雲の下や船の輪郭に当たる光も見比べたい。出発の期待を、人物の表情より港全体の明るさで伝えている。
制作背景
1648年にブイヨン公フレデリック=モーリスのために描かれ、《イサクとリベカの結婚のある風景》と対になった。右下の階段には注文主の名が記される。ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、この二作が1824年の創設期に収蔵されたと説明する。港と田園という違う場所を並べ、聖書の物語を風景画として楽しむ対作品だった。