何が描かれているか
港の左端に大きな円筒形の塔が立ち、左右には帆船が停まる。手前の岸で人々が荷物を運び、その間を小舟が行き交う。中央の海へ目を進めると、船はだんだん小さくなり、遠くの陸地へ視線が抜ける。
港の眺めを描いたエッチングで、酸で線を刻んだ金属版から紙へ刷った版画である。スコットランド国立美術館にも同じ構図の刷りがあるが、ここではワシントン・ナショナル・ギャラリーの所蔵品を掲載する。
作品の見どころ
岸の樽や人物から、船の船首、帆柱の上へ順に目を動かしたい。塔の曲面に沿う細い線と、船の縄の斜めの線が、建物と船の形の違いを伝える。
両端には線が密に集まり、中央の空と海は明るく開いている。塔と大きな船に挟まれた空間が広く見えるのは、この線の密度の差も手がかりになる。穏やかな港の油彩画と見比べる楽しみもある。
制作背景
館は原版の制作を1641年頃とし、掲載品を第4ステートと記録する。制作年と、この紙にインクが刷られた年は同じ意味ではない。
所蔵品の紙は、版を押した跡の位置まで、また一部はその内側まで切り詰められている。ここでは提供画像の全範囲を残すが、失われた紙の余白や図柄を復元してはいない。