何が描かれているか
トロイアを離れて長く旅を続けた女たちが、もう航海したくないと船へ火を放つ。海辺には燃える船と人々の動きがあり、奥の空には暗い雲が集まる。物語ではアイネイアスの願いを受けた神ユピテルが雨を降らせ、炎を消す。画面には火をつけた瞬間だけでなく、その先の嵐を思わせる空も描かれている。
作品の見どころ
人々や船の近くにある火と、遠くから近づく雨雲を見比べたい。火は人間の強い決意を示し、空はそれを変える出来事を予感させる。ロランは大勢の人物を画面いっぱいに描かず、海と空の広さを生かして物語を進める。明るい部分と暗い部分が同居するため、穏やかな港景とは違う緊張が生まれている。
制作背景
メトロポリタン美術館は1643年頃の作とし、注文主をジローラモ・ファルネーゼ枢機卿と記している。題材はローマ建国の祖とされるアイネイアスの旅に関わる。ロランは古典の物語を風景画の中に取り込み、人物の行為と天候の変化を結びつけた。この作品では、彼が得意とする空の表現が、単なる背景ではなく物語を語る役を担う。