何が描かれているか
伝説の聖女ウルスラが、仲間たちの船出を見守る。黄色い衣を着て赤い十字の旗を持つ人物がウルスラで、船へ向かう人々は弓矢を携える。弓矢は後の殉教を暗示する。大きな建物と船が両側から港を囲み、中央には穏やかな海と低い太陽が見える。悲しい結末を持つ物語の一場面が、静かな旅立ちとして表されている。
作品の見どころ
最初に中央の光へ目が行き、その後、手前の人々と船へ戻るように見ると場面が分かりやすい。船首や岸の人物の向きが、ウルスラの方へ視線を導く。柔らかな空、波の少ない海、細かく描かれた建築がつり合い、港全体に落ち着いた時間が流れる。物語の人物は小さくても、光と構図によって旅の始まりが印象深くなる。
制作背景
ロンドン・ナショナル・ギャラリーは1641年、ファウスト・ポーリのために描かれたと記す。ロランはローマで見た建築を想像上の港へ取り込み、依頼者に関わるバルベリーニ家の印も船の旗に描いた。宗教の伝説、同時代の注文主、古典的な建物が同じ景色に重なる。1824年には同館の創設期に購入された作品の一つとなった。