一人の女性が椅子に座り、膝の上の手紙へ目を落とす。
何が描かれているか
一人の女性が椅子に座り、膝の上の手紙へ目を落とす。背景は暗い室内で、窓や家具の細部よりも、手元と白い衣の明るさが先に目に入る。誰からの手紙か、読んで何を感じているかは示されない。静かな仕草だけで、私的な時間を感じさせる人物画である。風景で知られるコローが、室内の人物にも継続して取り組んだことを伝える。
作品の見どころ
顔から首、腕へ続く光の線に対し、椅子や背景は深い茶色でまとめられる。白い袖と紙の明るさを見比べると、読む行為が視線の中心に置かれていることが分かる。人物を理想化した神話の姿にせず、日常の中で考えごとをする人として描く。輪郭は柔らかく、布の重なりや暗い室内の色が落ち着いた時間の流れをつくる。
制作背景
メトロポリタン美術館は1865年頃の作品とし、18世紀フランスのシャルダンや17世紀オランダ絵画との関係を指摘する。コローは1854年にオランダを訪れており、フェルメールやデ・ホーホの作品を見る機会があった可能性がある。ただし特定の一作を直接まねたと決めつける必要はない。戸外の自然を見る画家が、室内の静けさにも同じ注意を向けた一枚である。
出典・画像について
画像:Jean-Baptiste-Camille Corot《手紙》/The Metropolitan Museum of Art / Open Access
The Met Open Accessの公開条件に基づき掲載。
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