1864年
68歳頃

モルトフォンテーヌの思い出

画家 カミーユ・コロー →
Souvenir de Mortefontaine / ルーヴル美術館
湖の岸辺に大きな木が枝を広げ、左下には女性と子どもたちが立つ。

何が描かれているか

湖の岸辺に大きな木が枝を広げ、左下には女性と子どもたちが立つ。水の向こうには淡い光が広がり、遠景の輪郭りんかくははっきりしない。題名の「思い出」は、特定の場所を正確に記録するだけではない画面の性格を伝える。人物は小さく、静かな水面と木々の空気に溶け込む。絵を見ていると、何かが起こる直前よりも、すでに過ぎた時間を振り返る感覚に近づく。

作品の見どころ

左の木の濃い葉が大きな影を作り、中央の水面に向かって視線を導く。空、湖、遠くの岸は近い明るさで描かれ、境界が柔らかい。女性の衣服の赤は小さな点だが、灰緑の風景の中で目に残る。細部を探すより色調のまとまりを見渡すと、明るさが画面全体に広がる仕組みが分かる。実景の形を保ちながら、記憶の中の風景のように整えられている。

制作背景

ルーヴル美術館は1864年のサロンでナポレオン3世が購入したと記録する。同館には、この絵を同年のサロンへ送ると記したコロー自身の素描そびょうも残る。制作年と出品のつながりが一次資料でも確かめられる作品である。晩年に多い「思い出」の風景では、戸外で見た場所を出発点にしつつ、アトリエで空気や気分を組み立て直した。初期イタリア風景と並べると変化が見える。

作品情報

材質・技法
カンヴァスに油彩ゆさい
所蔵
ルーヴル美術館(MI 692 bis)

出典・画像について

画像:Jean-Baptiste-Camille Corot《モルトフォンテーヌの思い出》/Wikimedia Commons / Public Domain Mark
画像の出典 / Public Domain Mark 1.0(画像情報:2026-09-26 確認)
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