何が描かれているか
斜めの線で組まれた木々の向こうに、丸い屋根の建物がのぞく。建物は明るい空間へ独立して置かれず、枝や影越しに見える。
紙の端にはむらや小さな染みがある。図像だけを取り出さず、残った紙面も見ると、複製可能なガラス版から一枚ずつ印画が生まれることが分かる。
作品の見どころ
線が密なところでは木陰が濃く、紙の明るさが残るところでは奥の建物が開けて見える。枝の輪郭を閉じた形で示すより、線の重なりで距離を作る。建物から手前の木へ、視線を何度か往復させたい。
技法はクリシェ・ヴェールだが、館は所蔵するこの紙面を「カウンタープルーフ」として分類する。通常の刷りと同一の工程だったとは言い切れない。
制作背景
館は制作年を1855年、所蔵番号を1967.18.11とする。デルテイユ目録57番の状態は「i?/ii」。第1状態との判断に疑問符が残り、全2状態のどちらかを確定していない。日本語の表記でもその留保を残す。
1855年という図像の制作年と、現存する一枚が刷られた時期は別の情報である。状態の疑問符やカウンタープルーフという登録も、この紙面に固有の記録として扱う。版画を一つの画像に平らにならさず、残された紙の端まで眺めたい。