何が描かれているか
若い女性が胸の前で両手を重ね、こちらを静かに見つめる。暗い髪に小さな飾りがあり、白い衣の上に濃い色の布が重なる。背景には具体的な部屋の様子がほとんど描かれず、顔と手が中心になる。題名は「真珠の女」として知られるが、真珠の装身具を細かく見せる肖像ではない。名も定まらない一人の人物の存在感が画面を満たす。
作品の見どころ
顔の周囲は暗く、額や頬、組んだ手に柔らかな光が当たる。姿勢は落ち着いているが、視線は鑑賞者を正面から受け止める。白い袖と肌の明るさ、黒い布の重さの差が、単純な形の中に奥行きをつくる。背景を取り払うほど人物の表情を探したくなるが、感情を一つに決めず、手の置き方や視線の強さをゆっくり見るのがよい。
制作背景
ルーヴル美術館は19世紀後半の作品として登録する。1868~1870年頃という年代は展覧会資料で用いられる推定で、正確な制作日は分かっていない。コローは晩年、風景と並行して多くの女性像を描いた。本作にも古いイタリア絵画を思わせる静かな構図があるが、特定の有名作の単なる模写として扱わない。風景画家のもう一つの仕事を示す代表作である。