何が描かれているか
屋外に座る女性が、本を開いて静かに読んでいる。背後には木々と空があり、人物は自然の中で一人の時間を過ごす。誰の本か、どんな文章を読んでいるかは描かれない。うつむいた顔と手元の本だけで、行為が分かる。神話や聖書の人物を風景の中に置いた初期作品とは異なり、ここでは目の前にいる人の日常的な仕草そのものが主題になる。
作品の見どころ
白い衣と青い袖が、土や木のくすんだ色の中で目を引く。女性の輪郭は厳密な線で囲まれず、周囲の空気と接する部分が柔らかい。大きな木の下の陰と、遠方の明るい空を見比べると、読書する人が静かな場所に守られているように感じる。視線を本から上げない姿は、鑑賞者に物語の続きを想像させるが、画面は答えを示さない。
制作背景
メトロポリタン美術館によれば、コローは1869年のサロンにこの作品を出した。人物習作を公開することは当時の彼には珍しく、批評家ゴーティエは色彩を評価しつつ人体の描写を批判した。画家はその後、人物をそのままに風景部分を描き直したとされる。現在の画面には1869年の出品時とその後の手直しが重なっており、単一年の完成作と単純化しない。