何が描かれているか
若い男女が体を寄せて座っている。左のエウカリスは相手の首へ腕を回し、その肩に頭を預ける。右のテレマコスは槍を持ち、正面を向く。二人は近いが、顔の向きはそろっていない。
女性の赤い衣服と男性の青い衣服が、明るい肌を左右から囲む。背後は岩陰のように暗く、遠くの風景はほとんど見えない。体と腕が前へ浮かび、人物同士の触れ合いが画面の中心になる。
作品の見どころ
最初は首に回された腕と、槍を持つ腕を比べてみたい。一方は相手へ向かい、もう一方は縦に立つ道具を支える。動作の違いを追うと、寄り添う姿の中に別れを控えた場面を感じられる。
顔や肩の輪郭がはっきりし、布のひだも細かく分かれている。暗い背景から明るい体、赤と青の境目へ目を動かすと、二人の近さと姿の違いを同時に見られる。
制作背景
ゲティ美術館は1818年の作品とする。題材はフェヌロンの1699年の小説『テレマコスの冒険』で、父オデュッセウスを探す旅を続けるため、テレマコスが恋人エウカリスと別れる場面だ。
ダヴィッドはブリュッセル亡命中にこの絵を制作した。古代の人物を扱っているが、直接の題材は後世の小説である。恋愛と旅の義務が重なる物語を知ると、二人の異なる顔の向きも見直せる。