何が描かれているか
青い衣装を着た踊り子の姿が四つ集まる。腕を持ち上げたり、背を向けて衣装を直したりし、顔はそれぞれ違う方向を向く。上から見下ろすような構図で、頭、腕、スカートが近い距離に重なる。正面へ向かって同じ振付を踊る場面よりも、舞台に出る準備や身支度の途中を思わせるパステル画である。
作品の見どころ
腕と肩の曲線をたどると、目が人物の周囲を回るように動く。青いスカートには明るい線と暗い色が重なり、薄い布の広がりが見える。背景の黄や緑は青を引き立てつつ、人物の輪郭へ入り込む。一人の顔だけを主役にするより、重なる体と色のまとまりを見たい。四つの姿の人物同定や、同じ人を繰り返し描いたかはここでは断定しない。
制作背景
プーシキン美術館の現行記録では1898年頃の制作。紙にパステルで描かれた晩年の作品である。ドガの踊り子は、舞台の華やかな場面だけでなく、準備や休憩の体の動きも主題になる。初期の稽古場では広い床と奥行きが目立つが、この絵では近づいた体と鮮やかな色が画面を満たす。同じ主題を長く描き続けた変化を比べてみたい。