何が描かれているか
馬車に乗る家族が手前を占め、奥の草地には馬と騎手が小さく見える。御者席にいるのはドガの友人ポール・ヴァルパンソン。その妻と乳母、乳母に抱かれた息子アンリが同乗している。題名は競馬場を示すが、勝負の瞬間よりも、競馬を見に来た一家の様子を近くから眺める構成になっている。
作品の見どころ
馬車の車輪と馬の体は画面の縁で途中から切れ、右側の家族が大きく迫る。反対に左側には広い空と草地が残るため、手前の親密な場面と遠い競馬の世界を同時に見渡せる。赤ん坊へ顔を向ける大人の身振りと、前へ進む馬の向きを比べたい。余白と途中で切れる形が、静かな場面にも動きの続きがあるように感じさせる。
制作背景
所蔵するボストン美術館の記録では制作は1869年。1872年には画商ポール・デュラン=リュエルへ売られたが、これは制作年とは別である。ドガが繰り返し描いた競馬の主題の中でも、風景、日常の出来事、家族の肖像が重なった一枚。すでにある《競馬》と比べると、同じ場所から何を主役に選ぶかの違いがよく見える。