何が描かれているか
座る女性が頭を後ろへ傾け、後ろに立つ女性が髪を梳いている。長い髪、服、室内には赤や橙が広がり、左側には白い部分が残る。二人の体は斜めに傾き、腕と髪がその間をつなぐ。部屋を細かな道具まで説明するよりも、身支度をする体の向きと、強い色のまとまりが目に入る油彩画である。
作品の見どころ
赤は髪だけに使われず、背景や衣服にも続くため、人物と部屋の境目が揺らぐように見える。その中で黒い線が頭や腕の形を示す。手の位置と首の傾きを比べると、髪を引く動きと体の曲がり方が呼応する。左の白は写真の余白や壁ではなく、ドガが塗り残したカンヴァスの下地。完成した色の部分と一緒に見るべき作品の一部である。
制作背景
1896年頃の作品で、未完成のままドガのアトリエに残された。画家の死後にはアンリ・マティスが所有した。細かな陰影よりも強い赤と大胆な線を前に出すこの絵は、晩年の表現を知る手掛かりになる。《浴盤》や《入浴後、体を拭く女》と合わせると、日常の身支度という近い主題でも、姿勢と画材によって印象が大きく変わることが分かる。