何が描かれているか
机に肘をついた男性が顔を横へ向け、左の女性が身を乗り出している。机には紙や本が積まれ、背後の額には馬が走る場面が見える。男性は作家エドモン・デュランティ、女性はモデルのエマ・ドビニー。部屋は事務室、おそらく小さな銀行の一室と考えられているが、場所の説明には留保がある。
作品の見どころ
女性の体は右へ傾くのに、男性は別の方向を見ている。視線が交わらず、机の斜めの線も二人の間に入り、近くにいながら通じ合わない印象を作る。背景の競馬版画は、静止した人物と対照的な動きを加える。題名から口論を想像しやすいが、二人の関係や男性が不機嫌な理由まで絵だけで決めることはできない。
制作背景
1870年頃の油彩画。ドガは知人の肖像を、整列してこちらを見る姿ばかりでなく、何かの途中にいるような場面として描いた。ここでは顔の似姿とともに、姿勢、机、壁の絵が人物同士の関係を感じさせる。物語の結末を探すより、どの身振りや配置から「不機嫌」という印象が生まれるのかを確かめると見やすい。