何が描かれているか
丸い浴盤に女性がしゃがみ、体を洗っている。背中を曲げた姿を上からのぞくような構図で、頭や肩、腕の動きがよく見える。右には水差しなどを置いた台があり、浴盤の曲線と台の直線が並ぶ。浴室の床や道具も含めた一枚のパステル画で、女性の姿だけが背景から切り離されているわけではない。
作品の見どころ
女性の背中をたどる曲線から浴盤の縁へ目を移すと、似た丸い形が響き合う。一方、右の台は上から見たように平たく広がり、水差しは横から見る形に近い。すべてを一つの視点で整えず、複数の見え方を組み合わせることで、体と道具の配置が強く印象に残る。パステルの細かな線や重なる色にも注目すると、肌と床の質感の違いが分かる。
制作背景
1886年の作品で、同年の第8回印象派展に出品された。ドガが繰り返し扱った入浴や身支度の主題の一つである。題名の「浴盤」は、湯や水を入れる浅い器を指す。同名の立体作品もあるが、ここで紹介するのは厚紙にパステルで描いたRF 4046の作品。美化した正面の裸婦とは異なる、日常の身振りを見る入口になる。