二人の子を抱える手と短剣。神話の悲劇を、まだ起きていない瞬間で表す。
何が描かれているか
岩陰にいる女性が二人の子どもを抱え、片手に短剣を持つ。ギリシャ神話のメディアである。リール美術館は、夫イアソンに捨てられた彼女が、子どもたちを殺そうとする場面と説明する。ここではその行為が終わった姿ではなく、抱く腕、抵抗する子の体、外へ向く顔が重なる。母子という身近な組み合わせが、物語を知ると恐ろしい緊張を帯びる。
作品の見どころ
明るい肩と子どもの肌が、深い岩の影から浮かぶ。赤い布は体の周囲に曲がり、腕や脚の向きにも折れやねじれが多い。顔が向く先と、短剣が向く先をそれぞれ追ってみたい。体が一か所に集まるのに、動きはさまざまな方向へ広がる。輪郭を順にたどれば、人物同士がどれほど密接に組み合わされているかが分かる。光と影の違いも、場面の切迫感を強めて見える。
制作背景
1838年の油彩、所蔵番号P 542。同館はサロンでの成功に触れ、関連する素描31点と習作を所蔵すると記録する。ここで掲載するのは、その小さな習作ではなくリールの大きな完成画である。同じ主題には別の時期の作品もあるため、年と所蔵先を合わせて区別している。
出典・画像について
画像:Eugène Delacroix《怒れるメディア》/Wikimedia Commons(撮影者未記載) / Wikimedia Commons
作品の全景と原ファイルを保持。色補正・生成・作品内の切取りなし。Commons個別ファイルのPublic domain表示に基づく忠実複製。国や地域で扱いが異なります。
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