何が描かれているか
建物に囲まれた中庭で人々が座り、中央付近で女性が踊る。左には演奏者、右には立つ人々、上の回廊には見物する人がいる。
モロッコのユダヤ人共同体の結婚式を題材にする。花嫁と花婿だけを大きく描くのではなく、音楽と踊りを囲む集団全体が中心になる。踊る人物の周囲には小さな空間が残り、座る人々の輪が即席の舞台を作っている。
作品の見どころ
中央の白い壁と踊る姿から、左右の暗い人々へ視線を広げよう。明暗の差で、狭い中庭に奥行きとにぎわいが生まれる。
同じ集まりでも、演奏する人、見守る人、身体を動かす人の姿勢は違う。音が聞こえなくても、反復する腕と衣服の色からリズムを想像できる。白い壁、赤い衣、暗い入口を順に見ると、中庭の明るさと奥の深さが同時に感じられる。
制作背景
1832年のモロッコ旅行で見た結婚式の記録や素描をもとに、帰国後の1839年に完成した。現地で一度に描き上げた作品ではない。
現在はルーヴル美術館所蔵。旅の観察を使う一方、記憶と構成によって祝祭の場面を作り直している。旅の記録と完成画の間には年月と再構成があるため、見た場面をそのまま写した画像とは考えない。