何が描かれているか
木立の暗がりに、五人の女がひとかたまりになっている。中央で腰を下ろし、うつむいているのがディアナ。狩りと夜の女神である。額の飾りは月をかたどり、足もとには猟犬がいる。
右下では、濃い紫の衣の娘がひざまずいて、女神の足を洗っている。地面には真鍮の平たい鉢と白い布。赤い胴着に青い裳の娘がすぐ隣に座り、その後ろに黒い衣の女が立つ。左端の一人は背を向け、橙色の布を肩に掛けている。
作品の見どころ
フェルメールといえば、少ない人数の静かな室内である。ところが画家として歩き始めた頃には、聖書や神話を主題にした、これより大きな絵を何枚か描いていた。この絵はその一枚で、いま知られている中でも最も早い時期にあたる。
ただし後の絵と切れているわけではない。夢を見ているような、内へこもった空気は、館が言うとおり、のちの室内画とそのままつながっている。神話でありながら、劇的な場面には仕立てていない。女神は何をするでもなく座り、足を洗われているだけである。
制作背景
この絵の来歴がたどれるのは19世紀からである。1866年より前、デン・ハーグの画商ディルク・ディルクセンが175ギルダーで売っている。買ったのはネヴィル・デイヴィソン・ゴルトスミットだった。
1876年5月、パリでゴルトスミットの遺品が競売にかかる。この絵はニコラース・マースの作として出品され、1万フランで落ちた。買い手はヴィクトル・デ・ステュルス。オランダ国のための購入で、マウリッツハイスに入ったのもこの年である。