何が描かれているか
左岸に立つキリストが右手を上げ、舟に乗る漁師ペトロとアンデレへ呼びかける。二人は網を海へ下ろしていたが、顔と手をキリストの方向へ向ける。
金地の下に青緑の海が帯状に広がり、小さな魚が泳ぐ。岩岸、舟、人物を横に並べる簡潔な構成で、呼ぶ側と応える側の距離を見せる。
作品の見どころ
キリストの上げた手とペトロの開いた手が、海を挟んで呼応する。言葉そのものは描けなくても、身振りの方向をそろえることで会話が成立する。
舟は少し斜めに置かれ、網の線と魚の反復が日常の仕事を示す。金地の聖なる背景と、具体的な漁の道具が同居し、奇跡ではなく人生の転換点を静かに表す。
制作背景
《マエスタ》裏面下部のプレデッラに含まれた1308〜1311年の一場面で、現在はワシントンのナショナル・ギャラリー・オブ・アートが所蔵する。
キリストが漁師を弟子へ招く福音書の物語である。祭壇画の連作では、後の受難と復活に立ち会う使徒たちが、どのように日常から呼び出されたかを示す導入として働いた。