何が描かれているか
古代ローマの女性ルクレティアが裸身で立ち、右手の短剣を胸へ向ける。背後には白い寝台と重い幕があり、足元には衣服が置かれる。
身体は細長い板の中央に収まり、腕と短剣が小さな三角形をつくる。物語の他の登場人物は描かれず、決断の瞬間だけが室内に残される。
作品の見どころ
大きな身振りを避け、直立する身体と短剣の一点へ物語を絞る。静けさが、決断の重さをかえって強くし、見る人は表情と手の動きへ集中する。
寝台、幕、床は日常の室内を示すが、身体は台座の上の像のように正面へ立つ。現実の部屋と記念碑的な姿が重なるため、出来事の近さと歴史上の象徴性が同居する。
制作背景
ルクレティアは、王子セクストゥス・タルクィニウスに暴行された後、自ら命を絶ったと伝えられる古代ローマの人物である。その死は王政の終わりと共和政の始まりにつながる物語として語られた。
アルテ・ピナコテークは1518年作、菩提樹板の油彩として所蔵する。美術館は、デューラーが以前の素描に立つルクレティア像を用いたことを指摘している。