何が描かれているか
長い巻き毛のデューラーが、白い手袋をはめ、黒と白の上質な衣服を着て座る。右手を胸元へ置き、少し横向きの身体から、落ち着いた目でこちらを見返している。
画面右の窓から、山と水辺が小さく見える。暗い室内、明るい顔とシャツ、遠くの風景という三つの距離が、一枚の肖像の中に組み合わされている。
作品の見どころ
整えた髪、手袋、窓外の風景までを使い、26歳の画家が自分をどのような人物として見せたいかを組み立てている。仕事中の職人ではなく、教養と地位を意識する若い都市人の姿である。
顔や髪には細い線を重ね、布と手袋には別の質感を与える。指先を隠す手袋まで目立たせることで、絵を描く手そのものより、画家が選んだ公的な装いへ注意を向けている。
制作背景
左上のドイツ語の銘は、デューラーが自分の姿を26歳の時に描いたと伝える。プラド美術館は1498年作として所蔵し、画家が最初のイタリア旅行から戻った後の自画像と位置づける。
ルネサンス期にも自画像はあったが、ここでは画家が独立した主役として半身で大きく描かれる。自分の顔だけでなく、服装、室内、風景を選んで社会的な像を作る点が重要である。