何が描かれているか
デューラーは暗い背景の前に正面から現れ、長い髪を左右へ垂らす。片手で毛皮の上着をつまみ、顔、鼻、胸元の線が画面中央の縦軸へ集まる。
左右には金色の文字が置かれる。左は制作年と画家の組み合わせ文字、右はニュルンベルク出身のデューラーが28歳の自分を描いたというラテン語の銘である。
作品の見どころ
真正面の顔と左右対称に近い構図が、ふつうの肖像よりも強い静けさをつくる。個人の顔と聖なる像の型が重なり、画家が自分をどう位置づけたかを考えさせる。
顔の片側には影が入り、髪の一房ずつと毛皮の柔らかさは細かく描き分けられる。厳格な全体構成と、触れられそうな細部が同時に働く点を見比べたい。
制作背景
アルテ・ピナコテークは1500年作、菩提樹板の油彩として所蔵する。美術館は、正面向きの型に祝福する救世主キリストのイコンを参照したと説明している。
これはデューラーがキリスト本人を名乗ったという意味ではない。正面性、まなざし、手の配置という既知の形式を自画像へ移し、見ることと創作する手を主題にしたと読む方が慎重である。