何が描かれているか
若い女性が暗い背景の前で胸から上を見せ、こちらを静かに見る。細かく巻いた髪、首元の飾り、赤褐色の衣が、明るい顔を囲んでいる。
身体は少し斜めを向くが、目は鑑賞者へ戻る。画面下では衣の形が簡潔になり、注意が顔、髪、胸元の飾りへ集まる。
作品の見どころ
赤い衣と明るい肌を暗い背景から浮かべ、細部を描き込みながらも、視線と表情の柔らかさを保っている。1500年の自画像の硬い正面性とは別の肖像表現である。
髪の細い線、肌の薄い陰影、衣の広い色面を順に見ると、すべてを同じ細かさで描いていないことが分かる。顔の周囲だけ密度を上げ、人物の存在を近づけている。
制作背景
ウィーン美術史美術館は1505年作、トウヒ板の油彩として所蔵する。人物の名は伝わらないが、髪形を手がかりにヴェネツィアの女性と説明している。
デューラーの二度目のヴェネツィア滞在初期に描かれた。画面の一部が簡略に見えることから未完成とされることもあったが、美術館は署名と年記がある点を挙げ、その見方を再検討している。