歌声は聞こえなくても、伸ばした首と開いた口から、一音を支える力が伝わってきます。
何が描かれているか
薄紫のドレスの女性が歌い、奥ではピアノとチェロが伴奏しています。pathetic songは、当時、悲しみや悲劇を歌う感傷的な歌を指す言葉でした。大劇場ではなく、家庭の客間で親しまれた音楽の場です。歌い手は手元の紙から顔を上げ、声を保つように姿勢を伸ばしています。
作品の見どころ
光は歌い手の顔と喉、手に届き、伴奏者は暗がりに残ります。首の筋や、少し開いた唇を見ていると、歌うこともまた体を使う行為だと気づきます。衣服の長い裾や壁紙の模様は華やかですが、絵の中心にあるのは、音を出している一人の集中です。
制作背景
解剖学を学んだイーキンズの観察は、漕手の腕だけに向けられていたわけではありません。所蔵館は、歌い手の喉や首、手まで注意深く描いている点を挙げています。のちの《コンサート歌手》と合わせると、歌の場面を、容姿の紹介から身体の働きを伝える肖像へ育てていく関心が見えます。
出典・画像について
画像:Thomas Eakins《哀しい歌を歌う》/哀しい歌を歌う — Thomas Eakins / National Gallery of Art / CC0 1.0
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