何が描かれているか
下では使徒たちが石の墓を囲み、驚いたように上を見る。上では聖母が月の上に立ち、天使の集まりとともに空へ昇る。
地上と天上は雲で分かれるが、使徒の視線と天使の動きが上下をつないでいる。縦長の形そのものが、上昇する主題に使われた。使徒たちが囲む空白から聖母へ目を上げると、地上と天上の距離をそのまま体験できる。
作品の見どころ
青い衣と赤い布、白い雲の色を順に追ってみよう。暗い地上から明るい上部へ、色の違いが視線を運ぶ。
人物の身体はまだ後年ほど極端に細長くない。ヴェネツィアで学んだ豊かな色と、スペインの大きな祭壇に必要な遠くからの見やすさが結び付く。近くの人物だけでなく、上へ小さくなる天使をたどると、祭壇画らしい高さが際立つ。
制作背景
トレドのサント・ドミンゴ・エル・アンティグオ修道院の祭壇画群の中心作として、1577〜1579年に制作された。スペインで得た最初期の大注文である。
現在はシカゴ美術館に所蔵される。元の祭壇から離れているため、上下に別作品が組み合わされた礼拝空間を想像すると役割が分かりやすい。現在の一枚だけで完結した構図と考えず、ほかの祭壇画とともに上下へ続く配置を意識したい。