何が描かれているか
赤い法衣の聖職者が木の椅子に座り、眼鏡越しにこちらを見る。白い衣と床の模様が、赤の広がりを区切っている。
人物はフェルナンド・ニーニョ・デ・ゲバラ枢機卿と考えられている。ただし所蔵館は「おそらく」としており、確定した名札のようには扱わない。椅子の垂直線に対して法衣が大きく広がり、座る人物の身体を画面いっぱいに見せる。
作品の見どころ
法衣の赤だけでなく、眼鏡の細い線と、椅子を握る手に注目しよう。大きな色の面と小さな緊張が同居している。
豪華な地位を示す衣装に対し、顔は理想化されすぎていない。目、眉、頬の左右差まで描くことで、役職だけではない個人の存在感が出る。赤い衣から顔へ目を上げ、最後に眼鏡越しの視線を見ると、地位と個人の表情が順に現れる。
制作背景
1600年頃の肖像で、現在はメトロポリタン美術館が所蔵する。モデルの同定に留保があるため、題名も一般的な《枢機卿の肖像》を用いる。
宗教画の細長い聖人像とは別に、エル・グレコが同時代の人物をどのように観察したかを示す作品である。人物名には留保があるため、服装が示す役職と、固有名による同定を別々の情報として扱う。