何が描かれているか
画面の下では、赤い寝台に聖母マリアが横たわり、周囲に使徒たちが集まる。その後ろに立つキリストは、小さな白い姿で表された聖母の魂を抱く。題名の「就寝」は、聖母の死を眠りになぞらえた呼び方である。
上には、天使に迎えられる聖母がもう一度描かれている。一つの画面に地上の別れと天上の姿を重ね、人物を金色の背景の前へ並べる。写真のように一瞬を切り取る構成とは違う。
作品の見どころ
寝台の横長の線と、中央を上へ伸びる明るい領域を見比べよう。悲しむ人々の視線が中央へ集まり、そこから上部へ目が移る。
細い白い線が衣のひだを区切り、赤や緑の面が隣り合う。一方で人物の身体や建物には厚みも見える。平たい聖画像の形式の中に、立体的な形への関心を探せる作品である。
制作背景
シロス教区の美術館は、制作を1565〜1566年頃としている。エル・グレコがクレタで聖画像を描いていた時期に属し、板にテンペラと金を用いた作品として伝わる。
1983年に署名が再確認され、初期作品として注目された。ビザンティンの伝統とイタリア美術の要素が重なる姿を、後の《神殿を清めるキリスト》と比べると、画家の出発点が分かりやすい。