1610〜1614年頃
60代後半頃

ラオコーン

画家 エル・グレコ
Laocoön / ワシントン・ナショナル・ギャラリー
蛇と格闘する古代神話の人物たちの後ろに、トレドの町が現れる。神話の舞台を現代の風景へ移し、裸の身体のねじれと空の不安を結び付けた晩年作だ。

何が描かれているか

中央のラオコーンと息子たちは裸で地面に倒れ、蛇と格闘する。左から馬が走り、遠景には古代都市トロイアではなくトレドの町が見える。
ギリシャ神話では、神官ラオコーンはトロイアの木馬を警告した後、息子たちと蛇に襲われる。エル・グレコが描いた、現存する珍しい神話画である。手前の三人は互いに離れて倒れ、左の馬と遠い都市が横長の空間をさらに引き延ばす。

作品の見どころ

身体の輪郭りんかくを一本ずつ追うと、人物が横、斜め、縦にばらばらの方向へ引かれている。蛇だけでなく、画面全体が身体を引き裂くような構成になっている。
肌の灰色、草の緑、空の青が冷たく重なる。神話を遠い昔に閉じ込めず、見慣れたトレドの風景へ置くことで、不安を現在の出来事のように近づける。蛇の細い曲線と人物の長い手足を交互に追うと、身体がほどけていくような不安が強まる。

制作背景

1610〜1614年頃の晩年作で、現在はワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵。制作事情や注文主は確定していない。
1614年の遺産目録に記された《ラオコーン》の一つと考えられるが、同一性は確定しない。可能性を事実のように言い切らない。注文主も目録との完全な対応も分からないため、晩年の神話画という範囲を越えて断定しない。

作品情報

材質・技法
カンヴァスに油彩ゆさい
所蔵
ワシントン・ナショナル・ギャラリー

出典・画像について

画像:El Grecoラオコーン》/ラオコーン — El Greco (Domenikos Theotokopoulos) / Wikimedia Commons
画像の出典 / CC0 1.0(画像情報:2026-09-11 確認)
CC0または所蔵館Open Accessとして提供された画像です。
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