神殿で、祭司コレソスがカリロエを救うため自らを犠牲にする。人々は驚き、身体を反らし、出来事へ目を向ける。《ぶらんこ》の軽やかさとは違う、大きな悲劇を描くフラゴナールを見ることができる。
何が描かれているか
大きな柱の間に祭壇があり、白い衣の祭司が立っている。前にはカリロエの姿があり、周囲の人々は倒れ込んだり、腕を上げたりして反応する。上方の暗い空間にも人物の姿が浮かんでいる。
題材は古代の著述家パウサニアスに伝わる物語。祭司コレソスは、カリロエを犠牲にする代わりに自分の命を差し出す。現実の儀式の記録ではなく、愛と犠牲をめぐる悲劇の一場面である。
作品の見どころ
まず白い衣に当たる光から、足元の女性、手前の赤い布へと目を移してみよう。暗い柱の間に明るい人物を置くことで、混み合う場面でも中心の出来事が浮かび上がる。
周囲の人の手や顔は、中心へ注意を集める方向をつくっている。ひとりずつ表情を読む前に、身体がどちらへ傾いているかを見ると、驚きが周囲へ広がるような構成をつかめる。
制作背景
1765年のサロン、当時の公的な美術展で発表された大作。この作品はフラゴナールが王立アカデミーに受け入れられる最初の段階につながったが、正式会員としての手続きをすべて終えたわけではない。
ルーヴル美術館所蔵のカンヴァスで、高さ約3メートル、幅4メートルに達する。同じ題材には構想段階の小さな習作もあるが、ここに掲載するのはサロンに出品された大作のほうである。