何が描かれているか
室内の左に開いた戸棚があり、中から若い男性が姿を見せている。前には身を乗り出す男性、その隣に女性、左側には顔を伏せる若い女性がいる。右に寝台、奥に人影がある。
所蔵館は、娘の恋人が衣装戸棚に隠れ、怒った両親に見つかった場面と説明する。手に持つ帽子や乱れた寝具も密会の手がかりとして読む。人物の台詞がなくても、姿勢だけで出来事を想像できる。
作品の見どころ
これは色を塗った油彩画ではなく、エッチングと呼ぶ版画。細かな線の重なりが壁の暗さや服のしわを作り、白い紙が顔や衣服の明るい部分になる。線の密度にも注目したい。
戸棚へ向かう父親の背中と、その中の男性の小さな身ぶりが対照的だ。奥の使用人も場面をのぞき、見る私たちも出来事を目撃するような構成だ。
制作背景
クリーヴランド美術館は1778年の作品として記録する。ただしこれは版に付けられた年代で、所蔵する一枚の紙が刷られた日を確定する情報ではない。版画は同じ版から複数の紙へ刷ることができる。
恋の題材は《ぶらんこ》などの油彩画にも登場するが、この絵では線と明暗、狭い室内の人物のやり取りで語られる。庭園の華やかさと比べると、フラゴナールの物語を見せる方法の幅が分かる。