眠るエンデュミオンのもとへ、女神ディアナが近づく。雲、布、翼のある子どもが斜めにつながり、静かな眠りの場面に軽い動きが生まれている。若いフラゴナールの、装飾的な神話画の一枚だ。
何が描かれているか
右下では若い男性が赤い布に身を預け、眠っている。左上には青い布をまとったディアナが浮かび、その間を翼のある子どもがつなぐ。地面には羊や犬も見え、雲の世界と地上が一つの画面に重なる。
ディアナとエンデュミオンという神話の登場人物を描く。現実の夜の記録ではなく、眠る青年を訪れる女神の場面である。題名を知ると、雲の上の女性と地上の男性の関係が読み取りやすくなる。
作品の見どころ
青い布から白い肌、赤い布へと続く色の流れを追ってみよう。斜めの配置が上下の世界をつなぎ、空から地上へゆっくり降りてくるような動きを感じさせる。
人物の輪郭は固く閉じられず、雲や背景と柔らかくなじむ。羊や犬を細かく探す前に、大きな明るい形のつながりを見ると、装飾画としてのまとまりを味わいやすい。
制作背景
制作は1753〜1756年頃。所蔵館の研究によると、出入口の上などに掛ける装飾画として作られ、現在の長方形の画面には後から加えられた部分がある。もとの形と現在の形は同じではない。
かつてブーシェの作品とされていたが、現在はフラゴナールの作品としてワシントン・ナショナル・ギャラリーに所蔵される。師から学んだ柔らかな色や神話表現を考えるうえでも、興味深い一枚だ。