黄色い服の少女が、手にした小さな本へ目を落としている。大事件は何も起こらないが、読書に集中する時間が画面を満たす。近づくと、顔の穏やかさとは対照的に、服には勢いのある筆の跡が残っている。
何が描かれているか
少女は画面の左へ顔を向け、背中を大きなクッションに預けている。手には開いた小さな本があり、目はそのページへ向く。背景は簡潔で、読む姿と服の色に注意が集まる。
本の題名や少女の名前を、絵から確定することはできない。特定の小説を読む実在の人物として説明するのではなく、読書する姿を中心とした作品として見るのがよい。
作品の見どころ
離れて見ると、黄色い服や白い襟は滑らかにまとまって見える。画像を拡大すると、服には太く速い筆の動きが残る。細部を均一に塗り込めず、見る距離によって違う表情をつくっている。
所蔵館は白い襟の部分に、濡れた絵の具を筆の柄などで引っかくような技法を指摘している。静かな人物の内側に、描く手の素早い動きが残っている点が、この絵の面白さである。
制作背景
ワシントン・ナショナル・ギャラリーでは1769年頃の制作とされる。自由な衣装や表情を描く「幻想的人物像」と呼ばれる一群との関係が、作品の研究で明らかになってきた。
調査では、現在の横顔の下に、もとは見る人の方を向いた顔があったことが分かっている。最初から迷いなく完成した一瞬の絵ではなく、描き直しを経た姿として眺めると、静けさにも別の奥行きが生まれる。