木に彫った白い線が、人物と植物を一つの模様へつなぐ。タヒチの経験を再構成した版画集『ノア・ノア』の一枚だ。
何が描かれているか
二人の女性が木のそばに立ち、手前には動物、上部には小さな人物と「NOA NOA」の文字が置かれる。左の女性は棒を肩に渡し、右の女性は明るい腰布を着けている。木や地面にはうねる線が重なり、人物と植物の区切りが部分的に曖昧になる。黒いインクと紙の明るさだけで、複数の場面が上下につながる。
作品の見どころ
木版は、木を彫って残した所へインクを付け、紙に刷る技法。この絵では、彫った溝の白い線が水や葉のように広がる。油彩の色面と違い、線の太さや黒の密度が形を作っている。人物の周りの細かな模様を追ったあと、文字を含む上部へ戻ると、一枚の中に風景と装飾、物語が重なる構成が見えてくる。
制作背景
クリーブランド美術館が1893〜1894年と記録する木版画で、ここでは同館所蔵の刷りを紹介する。題名は「芳香」と訳され、同名の版画集に含まれる。同じ図柄の手彩色刷りとは異なり、この刷りには水彩の色が付いていない。画家のタヒチ像を再構成した表現として、現地の暮らしをそのまま記録する資料とは分けて見ると、版画の独自の形を読みやすい。
出典・画像について
画像:ポール・ゴーギャン《ノア・ノア(芳香)》/The Cleveland Museum of Art
所蔵館のCC0条件を確認した図版。全景を保ちWebPへ比例縮小。 作品、文字、署名を残し、周囲の薄い撮影余白だけを表示上で減らす。採用画像の全体表示へも切替可能。
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