緑の波の中へ、赤い髪の女性の背中を置く。自然の色をそのまま写す描き方から離れた、水と身体の関係を見てみよう。
何が描かれているか
緑色の波が画面を大きく占め、その中に赤い髪の裸の女性が描かれる。女性は背をこちらへ向け、両腕を曲げて頭の後ろへ置いている。身体の近くには白い波の縁が伸び、細い曲線が重なって水の動きを示す。海の地平線や広い空よりも、水と身体が接する近い範囲を中心にした、縦長の構図になっている。
作品の見どころ
女性の背中と波の曲線を見比べてみよう。輪郭は周囲の色と明確に分かれ、赤い髪と緑の水が強く対比される。自然な肌の陰影だけで身体を描くのではなく、色の違いでも姿を浮かび上がらせている。波は細部まで均等に描かれず、大きな形として扱われるため、画面全体に続くうねりを感じやすい。
制作背景
1889年の油彩で、クリーブランド美術館所蔵。ゴーギャンがタヒチへ初めて渡る1891年より前の作品なので、南太平洋で見た場面と取り違えないようにしたい。女性の姿から溺れた事件や特定の人物の感情を読み取れるわけではない。同時期の《黄色いキリスト》と並べると、人物の色を大胆に変える関心が、異なる題材にも現れていることが分かる。
出典・画像について
画像:ポール・ゴーギャン《波の中で》/The Cleveland Museum of Art
所蔵館のCC0条件を確認した図版。全景を保ちWebPへ比例縮小。
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