何が描かれているか
青い衣の聖母が玉座に座り、膝の幼子を支える。玉座には植物が茂り、足元の左右に小さな天使が見える。絵具が失われた部分も多く、制作当初の色をそのまま見ることはできない。天使は巻物を広げており、所蔵館によると復活祭に聖母へ歌う言葉が書かれている。
作品の見どころ
幼子は正面を向かず、画面の外の誰かを祝福するように身体をひねる。メトロポリタン美術館は、この向きから、もとは祭壇画の中央に置かれた可能性を示す。植物の細部と衣のゆるやかな線にも目を向けたい。玉座を覆う草木は単なる飾りではない。所蔵館は、地面を意味するラテン語と結び付け、聖母の謙虚さを表すと説明する。幼子の向き、葉の描き分け、衣の流れる線を順に見ると、静かな正面像の中にも動きがある。
制作背景
同館は1410年頃、ヴェネツィアで描かれた作品と説明する。失われた部分が多いことを前提に、現在見える細部から考える必要がある。板絵の大きさは縦約86センチ、横約51センチ。所蔵館は、ジェンティーレが同時期にヴェネツィアのドージェ宮殿の装飾にも携わったと記す。現在の傷は作品の一部として見えるが、欠けた箇所の元の姿を推測で補わない。